特集:マスターズ・バックナンバー


 これまでお送りしてきたゴルフ西遊記のバックナンバーからマスターズに関するコラムを集めました。

 特集:マスターズストーリー(未完)


 

(1997.4.23掲載文から抜粋)

タイガー……あれは革命だね

 そういえば見たかな? マスターズのタイガー・ウッズ。なんか一人で違うコース回ってるんだ、うん、あれは違うコースだね。僕はね、10回もオーガスタ回ってるからわかるんだけど・・・なんていうかな、昔、力道山たちがアメリカに行く時の飛行機はプロペラで行ったじゃない。プロペラの飛行機で羽田から。そのプロペラの飛行機しかない時代に、いきなりコンコルドが自動操縦で着陸してきたみたいな、そんな感じだね。ちょっとすごすぎるな、あれは。

 彼の偉いところというのは、気がついたと思うんだけど、普通これだけ大量の差がつくと、グリーングリーンにって、グリーン上に早く気持ちが向っていっちゃう。ところが彼はリードする前、つまり初日から72ホール目を終わるまで、まったくプレーのリズムが変わらなかったよね。要するに一打に対する集中力、目つき、顔つき、すべてが変わらないというところが凄かった。

 まあ飛距離もさることながらね、飛ぶだけじゃなくてアイアンの正確性とパッティングのうまさっていう部分もある。彼のパットを見た後に尾崎選手のパットを見ると、やっぱり合わせてるんだよ。要するに彼は守りに入らずに攻めのパットをしてるんだよ。そこがすごかったね。

 とにかく10回回った経験で言うと、あの景色というのは、セカンド打つ景色というのは異常だよ。もうね、ほんとすごい。

 パー5、15番のセカンドが9番とかウェッジだよ。ニクラスが出た頃15番はさぁ、1番アイアン2番アイアンでセカンドを打つっていうんで大騒ぎになったんだから。それがいまや9番やらウェッジだよ。これはカルチャーショックっていうかね、革命だね。しかもカーボンとかいうんじゃなくてスチールだから。


(1997.8.23掲載)

グリーンジャケットの着心地

 そういえばジュニア合宿の話してなかった。今回はジュニアが5人来て、通算で言うと7人ぐらい来たんだけど、けっこうね、皆積極的というか、それなりに皆こう自分自身をしっかり持ってるというか、いい子達だったよ。合宿は先週の金曜日で終わりました。

 朝7時半に朝食なんだけど、それから掃除とか、練習、あるいはトレーニングとか、いろんなことが時間割に書いてあるんだけどね。それだけじゃなくて、今回僕がずっと1週間ほとんど、基本的には毎日行ったんだけど、よく見てあげられたから、子供達も大満足だったね。

 レッスンも十分してあげられたし、ゲームもできたし、あるいはバーベキューとか、花火大会もあったし、あるいは僕自身の想い出話、中学ぐらいの時の話もできたしね。やっぱり泊まり掛けでずっとね、1週間近く見てると、いい収穫があるね。

 その子達がプロになるならないっていうのは関係なくてね、ただその子達がゴルフをずっと生涯の友としてね、やっていってくれるか、あるいはたったその短い期間でもなんかこう自分の一生、それこそお便りのボールの話じゃないけど、やっぱりこう、あの時のあの一瞬が自分にとっていい想い出で、ずっと自分が曲がりそうな時、あるいはくじけそうな時、ふっとこう思い出して助けてくれたらなって、それだけでもいいんだけどね。あんまり強くなって、こうなってこういうふうに試合出て、こういうふうになろうなんていうふうな、そんな目標を求めるわけじゃないんだ。

 そういえばおもしろい話が1つあったんだ。千葉県の八千代市から来た男の子で、まあ仮にK君としとこう。金曜日の夜にバーベキューやったんだけど、その夜ちょっと寒かったんだ。

 練習終わって、じゃあそろそろバーベキューでもしようかっていう時に寒くて、でK君は半袖だったから、何か着といでって言ったら、そしたらだいじょぶですだいじょぶですって言うわけ。いやそんなこと言わないで風邪引いたらダメだぞ、何か着といで、その辺にあるものでいいから着といで、って言ったのね。そしたらそのK君っていうのがマスターズの、僕がマスターズに行った時に買ってきたTシャツをさりげなく着てきたわけだ。

 で、僕は、K君ね、それほんとにジョージアのマスターズで買ってきたTシャツだぞ、着心地はどうだ?って聞いたんだ。そしたら、あっ、ほんとですか、ほんとだ、うわー緊張しちゃうぅ〜、すごい着心地いいとか言って、じゃあ汚しちゃまずいなぁとか言ってるわけ。

 じゃあ汚したら、もしね、君がマスターズに出れるようだったらその時買ってきてくれればいいよ、なんて言ったんだ。

 合宿が終わる時に、皆帰る時に作文を書いていくんだけど、そのK君は、自分はマスターズのTシャツがすごく着心地がよかったです、と、でもたぶんグリーンジャケットのほうがもっと着心地がいいと思うんで、グリーンジャケット着れるようにがんばります、って書いてあったんだ(笑)

 皆ね、今の子達っていうのは積極的というか、自分のやろうとしてることっていうのをやっぱり自分で言ってくからね。やっぱりいいよね。かえってこう、なんか、自分はあのーそんないいです、なんとなく、っていうんじゃなくて、自分はマスターズでグリーンジャケットを、なんていうふうに声を出して言えるっていうのはやっぱりたいした、なんていうか成長というか、頼もしい限りだね。

 このジュニア合宿は、僕自身にとってもほんとにリフレッシュというか、こんなリフレッシュがあったんだっていうような、そういういい意味でね、刺激を受けたいい1週間だったね。


(1997.9.5掲載文から抜粋)

気持ちとターゲットの差

 こないだもノーマンの話をしたけど、彼のことをもう少し詳しく言うと、きもーちこうなんていうのかな、弱いって言ったら変だけど、例えば去年優勝しそうだったじゃない、マスターズで。あれでファルドがステディなゴルフでどんどんどんどん1打1打、また1打また1打って近づいてきたよね。

 あの時に8番ホールが1つのターニングポイントになってたと思うんだけど、2オンしそうなところから左のマウンドの下に落として、確かボギーかなんかにしてしまったんじゃなかったかなぁ。それでぐっと流れが変わったんだけど、そこで本当はあの位置からだとやっぱりグリーンの右目を狙ってくるはずなんだよね。

 それを本当は気持ちでは右目を狙ってるはずなんだけど、やはり悪いイメージを払拭したいっていうか、拭いさりたいから、スイングターゲットがピンを向いちゃう。そうすると自分の気持ちの狙いとスイングターゲットが違うから、結果的に球がブレてしまう。そういうふうに僕は見たんだけどね。

 問題はその後、それでもまだ2ストロークか3ストロークか勝ってたはずなんだけど、やっぱりその後に考えることがもう勝ってないよね。もう並ばれてるというか、時間の問題じゃないかっていうのを、見てる者にも伝染するようなマイナスイメージしかなかったよね。

 今年タイガーもやはり7番で2アイアンでティーショット打って左の林に入れて、そこからはバンカーしか入れられないんだけど、最高のリカバリーをして、そこからバンカーショット最高だったけど、ボギー。ということで、あそこでまたムード的には嫌だったよね。

 で、その次の8番ホール。あの時にタイガーは確かアイアンを持ってたんだけど、僕の情報によると2アイアンだったんだ、セカンドが。いわゆるアゲンストの中2アイアン持って打ったらしいんだけど、あの時やっぱりタイガーも左にはずした。前の年のノーマンのように。

 ただし、タイガーはもっといいところで止まった運があったかも知れない。でもその運っていうのはなんだったんだろうっていうふうにもっと考えると、タイガーはあの2アイアンでやはりピンを狙ってたんだ。

 はた目にも分かるように、はた目の人間にもわかるほど、グリーンにしっかりと向いてたし、よしんばイーグルチャンスに、あわよくばイーグルチャンスにつけようっていう気持ちを持って、アドレスに入っていった。要するに気持ちとスイングターゲットが合ってるんだよね。だからひっかけはしたけれど、それがなんか結果的に運につながってるというのかな。それがノーマンとの差だと思うんだ。


(1997.9.6掲載)

タイガーのマスターズ攻略

 またノーマンの話だけど、ノーマンはやっぱり去年のオーガスタの8番でバーディ取りたい、バーディを取らなきゃいけない、このムードを拭いさるためにもバーディを取らなきゃいけない、っていうふうに思った時に、それでやや右目に打って、あわよくば乗って、あるいはパターを使えるところに行ってくれればバーディ取れるんじゃないか、というような考え方をノーマンはしてたと思うんだ。

 ただ、やっぱりちょっとそれと、その気持ちと、スイングターゲットっていうのかな、スイングのほうはもっとあせってたというか、もっとピンに寄ることを欲しがってたというかね。それがやっぱりちょっと誤算だったんじゃないかなと。

 ただピンの位置も若干違ったけどね。去年のノーマンのほうが今年のウッズよりも難しいピンの位置だったから、そんなに甘い感じではいかないけど、でも去年のピンの位置だったらますます右には打てないね。

 だから狙うとしたら、ストレートにピンを狙うほうが結果的に右目からと思うほうがフックで攻めるじゃない。そうするとそのフックが強くいった場合にはもう左にしか行かない。かえってあの状況の中ではストレートを打っていったほうがいいんだよね。

 そういえばタイガーは今年のマスターズでほとんどストレートとかフェードで攻めてったらしいけどね。13番14番みたいなところはスプーンでフック打っていったけど。でもそれ以外はほとんどストレート、フェードで攻めていったらしいね。タイガーは左に曲がるボールでマスターズを攻めてはいなかったね。左に曲がるボールで攻めたのは13と14だけ。あの2ホールだけだった。

 15番はむしろ、フェード気味のストレートっていうイメージで打っていったね。まあそれだけでも十分にショートアイアンで打てるほど飛んでいくからいいけど、普通の選手はやっぱりどうしても距離を若干のドローでランを使いたいから、右の傾斜を少し利用してドロー目で打ちたいっていう気持ちになるんだけど、タイガーは遥かそれ以上の飛距離を持ってるから、ストレートでもあるいはフェードでも右の斜面の向こう側を使えるからね。ダウンヒル側を使えるからもっともっと距離が出ていっちゃうっていうところがあるね。


(1998.1.30掲載文から抜粋)

自分に言い聞かせておこう

 いまね、トロフィールームをいじってるんだ。なんとなくここは、たまにいじらないと気が済まないんだよね。ちょこちょこいじる。

 マスターズ委員会から送られてきた皿があるんだけど、それを今ちょっといじってる。マスターズ丸山が今年出るよね。初めてマスターズに出てもらえるとしたら、外国人のディナーに出た記念写真と、イーグルを取ればイーグルのグラスかな。

 イーグルグラスって2種類あるのね。ティファニー製のやつで、ビールグラスみたいなのが2つあるんだけど、イーグルが取れればそれをもらえる。

 僕のところには実は・・・こういうのがあるんだよ。燦然と輝くTsuneyuki Nakajima Winner 1988 Par 3 Contest」クリスタルボールなんだ、これ。へっへっへっへ(笑) 笑ってる場合じゃないだろって(苦笑)

 このパー3コンテストに優勝するとマスターズに優勝できないっていうジンクスがあるんだけど、“その年は”なんだよね、あれ。僕は勘違いしてた。その年だけ優勝できないってのと、永遠に優勝できないと違うのに、そう勘違いしちゃった。

 だけど、なーんか変なジンクス作りたがるよね、みんな。ぶっとばしてやろうかと思っちゃうよ、そのうちほんとに(苦笑) そんな勝手にジンクス作るなって。もうねぇ、こっちはほんと一生懸命やってるのに、そんなたかだか小さなジンクスでさ、そんな不吉なジンクスに、なんかさいなまれてゴルフするのやだよねぇ。


(1998.3.9掲載)

だ・か・ら言ったでしょ

 ちょっと悲しいできごとがありましてですね、ちょっとつらいんですよ。懇談会でもちょっと話したんだけど、マスターズの選手バッジを1個なくしちゃったんですよ。

 マスターズのバッジが、本来は10個あるべきなんだけど、すでに1個なかった。これなくしちゃったのね、もっと前に。1989年のやつだったんだけど、それがたまたまうちのあるところから出てきたわけだ。この89年のは見た感じ白くて、上から白くてきれいなのよ。

 あっよかったよかったと思って、それをこないだの合宿だとかトミーチャレンジだとかで、いろんな選手とか他の研修生とか、プロにね、これがマスターズのバッジなんだよって見せてあげようと思って持ってて、まあ少し見せてたんだ。

 すごいなすごいな、いつか自分達も出たいなぁってことを言ってるわけなんだよね。よかったよかったと思って、早くしまわなきゃなぁって思ってて、ポケットに入れて、で金曜日の朝の朝まで持ってたんだ、それを。

 ところがちょっと金曜日慌ただしかったのね。長女がアメリカに行ったりとか、いろんなことをあーだこーだしてて、で気がついたら・・・なくなっちゃった・・・(泣)

 どーこに落としたんだかわかんないんだけども・・・もうなんて言ったらいいのかなぁ、これ・・・あまりにも途方にくれたというか・・・ほんとつらいですね。

 頭の中ではね、また取ってくるさ、この選手バッジはって思ってるんだ。思ってはいるんだけど、現実に1個なくなってるわけだから、なくなったっていうそのことに対して、非常にショックは消えようがないというか・・・なんというバカなことをしたんだろうと・・・(泣)

 あーあー・・・言われたんだよねぇ、うちのかあちゃんに。「なくしちゃうからしまっときなさいよ」って(苦笑) だいじょぶもうすぐしまうから、だいじょぶだいじょぶって言って、朝言われたのに、なくしちまったんですよ。

 「だ・か・ら言ったでしょう〜」って・・・もう人生つまんなくなっちゃうよ。それに輪をかけて長女はアメリカいっちゃうし。1年間帰ってこないんだよねぇ。さみしいねぇ。


(1998.3.10掲載)

また行って取ってきましょう

 マスターズの選手バッジはずっと一緒じゃなくて、若干の変化があるんだ。

 えーとね、1988年までは、なんて言ったらいいんだろうなぁ。1988年まではほとんど四角なんだけど、下のほうがちょっとこうポッチが出てるっていうか、キャデラックのマークみたいなっていうか、なんていうんだろう。まあ四角形なんです。で1989年から丸系になってる。

 まあ最近行ってないからまたわかんないけど(苦笑) たぶん丸系だと思うんだけどね。まあ、なくしちゃった分は、また行って取ってきましょう! それしかないです。ちょうどいい発奮材料ですよ。

 マスターズっていうと招待状が有名だよね。こないだの懇談会でも見せてあげたやつだけど、その招待状の後に細かいエントリーフォームが来るんだ。最初の招待状は「あなたは招待されました」と、要するに招待されます、それを通知いたしますということがくる。

 でその次に出場の申込のエントリーフォームがいろいろ来て、それには住所、名前、それから国籍とか、所属してるツアーだとかね、その他使うカード、例えばVISAだったらVISAだとかね。賞金はどうするとか、どこに送ったらいいかとか、そういう細かいいろんな要項が来るわけです。

 それに書き込んでいくと、その中にバッジっていう欄があるんだ。クラブハウスバッジっていうのがあって、これはクラブハウスの中に入れるバッジなんだけど、親、それから兄弟、妻と子供、ここまではこのバッジがもらえる。

 クラブハウスバッジってのは、ちゃんと鉄製っていうか、鉄って言ったら変なんだけど、ブリキじゃないんだけど、こうCLUB HOUSEって書いてあって、マスターズの模様がちょこちょこっと入ってる。

 これ以外にバッジというと、要するにパトロンって言われてる人が持ってる入場者バッジだね。バッジじゃないけど、入場チケットっていうのもけっこうきれいだよ。


(1998.3.11掲載)

うまくできてるよね

 マスターズのクラブハウスバッジは色によってまた違うんだ。選手のファミリーは例えば白。で真ん中に名前が入るようになってて、タイプライターで印刷した紙を中にはめ込んであるんだけど、そんな高価なもんじゃなくて安っぽい感じの物だね。要するに普通の安全ピンで留めるバッジ。

 クラブハウスバッジは長方形で、これが例えばメディアだとか、メンバーの人だとか、色が違うのね。オレンジとか、グリーンとか、いろんなその業種別っていうか、種類別によって分けてあるんだね。

 で僕が行く場合はいつも、僕の選手バッジと、ファミリーでうちの女房と子供2人と、それからまあ親戚の人、ってことで4つか5つぐらいもらってくるね。

 それで会場に入るんだけど、その他に、あなた個人として知り合いの人もいくでしょう、応援しにくる人もいるでしょう、そういう人のバッジを何枚要りますか?っていうのがあるんだ。それは買うんだけどね。選手でも買わなきゃいけない。

 1枚が確かね・・・いくらだったかなぁ・・・あんまりよく覚えてないけど、1万いくらじゃなかったかなぁ。で10枚買えば10万円ぐらいでしょ。でこれをだいたい10枚ぐらいオーダーしておいて、アメリカの知り合いの人だとか、日本から来た知り合いだとかに分けるというのがパターンだね。

 そっちのバッジはコースだけで、クラブハウスには入れない。で、選手とクラブハウスに入れるファミリーバッジは大会期間中ずっと使えるんだけど、そっちのは木曜日からしか使えないんだ。それ以前の曜日は、当日券を買って入ることになるね。要するに月火水は当日ゲートで買わなきゃいけない。

 ある意味ではその当日券っていうのは、本戦のチケットの数が限定されてるから、本戦見る人は本戦に集中して、本戦を見られない人が当日券を買って練習日を見るっていう感じになってるわけね。人数の振り分け方っていうのがけっこううまくできてるよね。


(1998.4.9掲載)

キャデラックの新車

 マスターズの時の宿舎は、だいたいみんな似たり寄ったりだね。あまり日本とそう違うものじゃない。

 だけど、道路の中央ってのがちょっと違ってるんだ。日本と違って中央分離帯ってのが走れる。中央分離帯ってのがなくて、要するに中央は黄色い線で区切られてるだけ。で左折する車はそこに入ってから左折してく。

 普通は中央分離帯があることで乗り越えられないでしょ。でも向こうは大きなスーパーマーケットとかそういうところあるから、そういうところから出てくる時に中央分離帯がなくて見通しが左右よければ、その中央分離帯が水平で道路とのでこぼこがなければ、すっと横切れるよね。そういう意味を兼ねても、真ん中っていうのが、車が通れるようになってるんだ、中央分離帯のところが。

 で、またその中央というのは、救急車とかパトカーとかが走るためにもでこぼこがないほうがいいんだね。だからそこは普通の一般車は走っちゃいけないことになってる。でパトカー、救急車、あるいは左折して、アメリカは右側通行だから左折していく時にそこを通っていく。あるいはモールとか、大きな駐車場から出てくる時に左折して向こう側に行く時に、その中央分離帯を越えていくという感じだね。

 ところがマスターズの時はちょっと違うんだ。出場する選手はマスターズのオフィシャルカーっていうのを借りれるのね。キャデラックの真っ白な新車。真っ白の新車を借りられるんだ、4ドアの。

 日本で言うと・・・クラウンとか、まあ、クラウンのロイヤルサルーンクラスじゃないかな。イメージとしては。それの真っ白。真っ白のクラウンの新車。ロイヤルサルーンの真っ白い車で、そこにマスターズっていうステッカーが貼ってある車を、選手1人1台ずつ借りられるっていう想像してみて。

 で選手だけじゃなく、ボランティア達の車があるから、だいたい400〜500台は車が用意されてるんだよね。すごいんだこれがまた。規模がすごい。400〜500台の新車が毎年毎年マスターズでは出ていくわけだからね。でそのマスターズのオフィシャルカーに乗っていれば、その中央分離帯を走っていっていいことになってるんだ。

 試合開催中はオーガスタへの道はすっごい渋滞なんだ。何キロっていう渋滞、もう1キロとか2キロとかいう渋滞。高速道路の出口まで2キロっていう表示があるでしょ。あのぐらいのイメージだね。

 でその2キロぐらいの渋滞、ずーーーと渋滞している中を、中央分離帯を前照灯、ライトをつけて、ずーと走っていっていいんだ、オフィシャルカーに乗ってる選手は。すごいでしょ。渋滞をわざわざ待ってないの。

 それもそこをぱーと走っていくと、警察の人がすぐ誘導してくれるっていうか、他の車を止めて、さーと通してくれてねぇ、ほんとすごいよあれは(笑)


(1998.4.10掲載)

飛行機が飛ばない訳

 マスターズというのはもう町中っていうか、町じゃなくてもう、国そのものが応援するっていう感じだね。

 昨日のオフィシャルカーや優先して走れるという話にしてもそうなのね。要するに選手達が予定時間っていうものを簡単に組みやすいようにしてるわけ。

 例えばスタート時間の何分前に着いて、どのぐらいの練習をしてくかっていうのはもう、各々みんなスケジュールができてるわけだね。ところが2キロの渋滞によって、30分、40分余計にかかることによって、ぎりぎりになってしまったり、あるいは間が保たなくなってしまったり、そういう誤差が出てきてしまうわけじゃない。

 だからそれをなくすために、だいたい予定通りになるように、そういう特別措置っていうかな、そういうことを認めてるわけだね。うん、これはすごいことだよ、ほんとに。

 応援といえば、例えば飛行機なんかも出ないしね。1986年の時に僕が出た時に、たまたまニクラスが優勝して僕が8位だった年でよーく覚えてるんだけど、この年はニクラスが最後の最後まで優勝争いを競ってた時だったんだ。

 で僕らは日曜日そのまま泊まるから別にどうってことないんだけど、日曜日のうちに帰るビジネスマンが多くいるわけだね。最終日の最終ホールを待たずに帰らなきゃいけない人もたくさんいるわけ。でオーガスタの飛行場から飛行機が飛ばないと。ニクラスが競ってるから。

 もう予定を30分過ぎても飛ばないんだ。最終的に僕が聞いた話によると、1時間過ぎてから飛んでったんだって。もう満席なんだよ。でも誰も飛べとは言わないし、飛行機の機長そのものも飛ぼうとしないわけ。

 で「たった今、ニクラスの優勝が決まりました」っていうところで大歓声と大拍手。もうみんな喜びに満ち溢れて飛んで帰ってったらしいよ。誰もその1時間遅れることに対して文句言わないんだからねぇ。そういうところが、やっぱりマスターズだよね。

 アメリカの知り合いがニューヨークに小さい頃から住んでるんだ。僕の仲のいい知り合いなんだけど、その人からその話を聞いてね。こんなことが今日オーガスタ空港であったんですよって。へぇ〜すごいなぁって。

 偶々その飛行機に乗ってる人が、その彼の知り合いだったんだよ。だからリアルなんだってその話が。もうみんなほんとに大歓声なんだって。でラジオ放送っていうか、もうテレビ放送も機内で流すんだって。そこまでするとやっぱり試合っていうのは燃え上がるよねぇ。


(1998.4.11掲載)

2人ともがんばってるね

 いやぁ、マスターズ、すごかったね、なんか3時50分のスタートだってね。ほんとに丸山もかわいそうだったね、あれは。でもほんと初出場の良さを出してるよね。まあ僕なんか、初出場の時はぜんぜんあんなゴルフできなかったから、やっぱり偉いなっていうか、よくやってるなっていう感じはするけどね。

 だから後は63ホール目までやっぱりいい位置で行って、残りの9ホールだねぇ。やっぱりメジャーっていうのはもう最後のバックナインだから。これが言い換えればトーナメントだから。

 それまではもう序曲。要するにプロローグというか、もう完全にそれまではスタッフというか、俳優っていうか、全部の筋書きをこうクライマックスに持ってくまでの整理整頓だからね。まあそこまで求めるのはちょっと酷かも知れないけどね。

 これ書いてる今頃ちょうど丸はサスペンデッドの残りが終わった頃だろうね。プレーし終わった頃じゃないかな。でまあ、スタートの組み替えをしてと。2日目もひょっとしたらホールアウトできるかどうかわからないね。当然遅れるだろうからね、予定よりは。でまた風が吹くなんて言ってたしね。

 ジャンボの3オーバーというのも、やはり苦手なアウトで2オーバー打ったけど、後半のあの風、特にジャンボが回った頃は突風だよ。ものすごい強さの風の中、あの中で3オーバーっていうのは、よくこらえたと思うよ。

 特に後半ピンチの連続だったよね。17番18番ぐらいだったよね。ほっとバーディを狙えるかなっていう状況だったのは。もう16番もピンチ、もうほんとに15番だってたいへんだったし、14番もそうだし、13番だってたいへんだったし。もうどこ見てもたいへんなホールばっかりだったよ。

 ブラウン管で見れば、そのたった1メートルぐらいのパーパットだけど、あそこの1メートルのパーパットっていうのは、普通のコースの、普通のトーナメントの1メートルとはわけが違うんだから。その中でやっぱり3オーバーで回って、なんとか2日目に望みをつないだっていうのは偉かったね。

 ただ、1つだけ助かったことっていうのは、やはり今年は雨が多かったってことと、また前夜に雨が降ったってこと。やっぱりその分グリーンが相当遅かったね。だからグリーンが例年通り速かったら、もうアンダーパーは1人もいなかったと思うよ。まずグリーンの上でボールが止まらないんじゃないかな。

 でもたいがいあんだけの風が吹くっていうのは、雨の降った後なんだ。ああいう強い風が吹くのは。だからまあ止まることは止まるんだけど、2日目からまた変わるから、どうなるんだろうなぁ〜(笑)

 いやぁほんとにすごいや。2日目も早起きして見なきゃ。


(1998.4.12掲載)

精神的疲労が取れなかったね

 やっちゃったねぇ丸山。まあでもサスペンデッドの残りの16、18とボギーボギー。うーん、これが痛いねぇ。やっぱり、初日のプレーはよかったと思うんだ。まあある意味で彼らふうに言えば、ゾーンに入ってプレーできてたわけだし、そういう点ではよかったよね。

 だけどまあ、いかんせんサスペンデッドになったのが夜の8時ぐらいだと思うんだね。でまあ8時からそこのその場でプレー続行不可能ということになったと。7時半か8時かわからないけど、だいたいそのへんだよね。7時半から8時の間にサスペンデッド決定されて、15番ホールアウトで帰ったわけだ。

 でもね初出場で、あんだけの強風の中で、それでなくても難しいマスターズの初出場で15番までナイスプレーしたわけだ。でその風の中で、疲れ切って、15番終わって宿舎に帰って、夕飯食べ終わって、なんだかんだでそうだね、帰ってシャワー浴びてご飯食べて10時はとっくに過ぎるわね。まあ11時だ。

 そうするとやっぱり、目に見えない精神的疲労っていうのがすっごく残ってたはずだよね。だから本来はホールアウトできて、仮に2時でもスタートいいや、2時でもあの風でもいいわ。でホールアウトして翌日、イーブンパーのままホールアウトすれば、スタートがゆっくりだね。まあたぶん1時とか2時とかいうスタートになるよね。そうすると精神的疲労が取れる時間はあるわけだよね。

 ところが精神的疲労は取れない。まあ肉体的疲労っていうのは誰が見ても、まあ同業者とか専門家が見れば、彼疲れてるなってのはわかるわけだよ。でも精神的疲労は見えないんだよね。だからよく言うじゃない、心の傷はどうたらこうたらと。

 要するに心の傷は人に見えるもんじゃないから直るのに時間がかかるとか言うけど、彼自身がやっぱり8時近くまでプレーして、くたくたになって、宿舎に帰ってシャワー浴びて、で休んで、で次の日の朝7時半にはプレーを再開しなければいけないわけだね。7時か7時半には。これは取れなかったね、精神的疲労がね。

 でやっぱり前日の、難しい難しいっていう風の中でこらえてこらえて、難しいっていう意識の中でプレーしていくその難しさってのを引きずってっちゃったっていうのかな。要するに区切りがつかなかった。

 ある意味では一般の人達が仕事をするよね。サラリーマンの人達が。でどうしても今日中に仕上げなければいけない仕事がある。その仕事を今日中に仕上げなければいけないんだっていう気持ちで出てくわけだよね。

 1日18ホールずつ消化していって、4日間の72ホールの蓄積で勝負が決まるわけだけど、18ホールっていうもう目に見えない、長年培ってきた1日の仕事の量ってのがあって、それをやらなきゃいけない今日の仕事を残しちゃった。そのまま帰ってしまった。

 要するに残務感ていうのかな、要するに残った仕事の量があるのに帰らなければいけない。しかもそれはヘビーな仕事だし、くたくたにならなければいけない。くたくたになるまでやって、しかもまだ仕事が残ってた。で次の日帰って、さあ机の上に、彼で言えば16番のティーに立った時に、やり残した昨日の目に見えないイメージの悪さっていうのかな、引きずらなくてもいいイメージを引きずってしまったっていうか。それが16、18のボギーボギーにつながったんだろうね。

 結果的にそれがそのまま次の日のプレーに悪い影響としてつながってしまったっていうのかなぁ。そんな感じだったね。


(1998.4.13掲載)

打たなくていい2オーバーだった

 昨日の丸山の話の続きだけど、やっぱり初日がどんなにつらい状況であっても、16、17、18の残りの3つのうち、1つボギーを打って1オーバーでもまあいいや、そうやって1日を終えられた人間と終えられなかった人間、その差ってのはけっこうあると思うね。

 で彼は特に初出場だからね。またアメリカのサスペンデッドの多さ。まあ直道君あたりだと、ずいぶん経験してるから、それに対しての気持ちの切替とか対処の方法とかいうのはあるわけだけど、彼にはそれはやっぱりわからないからね。そういった点では経験不足だから、どうしてもその気持ちの切替ってのができなかったっていうのかな。

 要するに18番までで1日なのに、15番までで終わらなきゃいけなかった、言葉は悪いけど残尿感、トイレに行っておしっこばーとしてあぁ気持ちよかったすっきりしたっていうふうに終われなかった。そういう残尿感みたいな。そんな言葉で表現したら悪いけどねぇ。

 結局18ホールというものをやれなかった。で結果的に残りの3ホールを、昨日の続きを1日越えたその日にやらなければならなかった。それがやっぱり彼のつらかったところだろうねぇ。

 初日の流れのままで16、17、18をやってたら2オーバーになってなかった。よしんばなってたとしても、最悪2オーバーになってたとしても、1日十分な睡眠を取って、18という区切りをつけられて、次の日に行くのとはぜんぜん違う。そういう点では打たなくていい2オーバーだったね。

 彼の他でも2日目のプレーの中で、初日よりも風は強くはないんだけど、やはり寒さがあって、初日のあのものすごく難しい、めちゃくちゃ難しいマスターズをてこずりながらやったイメージのままやってるプレーヤーっていうのがいたよね。だからサスペンデッドの魔力というのかな、あったね。

 テレビ見ながらいろいろ考えさせられることがあるねぇ。やっぱ自分が出たことが何回もあるから、あぁこれつらいだろうなぁとか、これたいへんだなぁとかね、ここはチャンスだ、ここはピンチだっていうのがやっぱ見ながらずいぶんあるけどね。ちょっとこう感情移入しちゃうっていうか、その場に自分が立ってしまうっていうところがある。

 で、まあスポーツ新聞では岩田さんがね、丸山は初日の13番刻めばよかったというようなことを書いてたね。かつて青木さんもジャンボも、刻むか刻まないかで迷って、結果的にチャレンジして失敗してさ、だから刻めばよかったんだってことを言ってるけど、そんなね、そんなことじゃないんだよ。そうじゃなくて・・・これは後日ちょっと詳しく書きます。


(1998.4.22掲載)

オーガスタの練習ラウンド

 さてマスターズの話をしよう。いやぁ、今回はオメーラが最後の最後で勝ったね。ある意味では非常に劇的かも知れないね、ああいうのは。要するにファインプレーに見えないファインプレーっていうか。

 野球でいうと、すばらしい!っていうんじゃなくて、玄人っていうか、芸が玄人好みっていうのかな。意外と目立たないけど着実なプレーをしてて、最後にバーディパーバーディバーディで上がって、あれぇ〜って感じだったね。最後まで虎視眈々という感じ。

 まあカプルスもイーグルあったりしたけど、結果的にやっぱり13番とか、ショットミスっていうのかな。まああそこでやっぱり何かあったんだろうね。まあいろいろ考えさせられるマスターズだったね。

 ジャンボの話も書きたいんだけど、その前に、ずいぶん前にオン・ザ・グリーンの会議室で出てた質問について。確か去年の質問(苦笑)

 練習ラウンドについての質問だったんだけど、オーガスタの練習は練習日だけじゃなくて、その年に出場する選手だったら、それよりも前に練習することがだいたいできる。それ以外はメンバー同伴じゃないとダメだね。

 例えば雅生を連れていった時に雅生をラウンドさせようと思ったら、僕だけじゃダメで、メンバーが同伴してないといけなかった。でもマスターズに出る選手だけは融通がきく。

 早めに行ってラウンドしたいって言ったら、50%はイエスって言われるね。なぜかっていうとすいてるから。だけどこれを無制限にしてしまうといけない。公式にはいいよとは言えないよね。だから50%の確率ぐらいでイエスと言われると。

 歴代優勝者だけはいつでもラウンドできるけどね。マスターズの優勝者というのは、オーガスタのメンバーの証であるグリーンジャケットをもらえるわけだけど、メンバーになるわけじゃないのね。でもオーガスタでのプレーはいつでもできるようになる。

 たぶんオーガスタのメンバーは一生なれないだろうねぇ。メンバーという資格が発生してくるとすれば、せいぜいニクラスとかパーマーとかだろうね。


(1998.4.23掲載)

メジャーは苦しむところ

 前にも書いたけど、アメリカのサスペンデッドの多さ、あるいはマスターズのスタート時間の遅さというのが、丸山にはやっぱり響いたね。

 とにかくマスターズってのはスタート時間が遅いんだ。以前僕が8位になった時も、最終組が2時前、1時40、50分ぐらいのスタートだったかな。まあ2時前ぐらいだったんだけど、4日間その1時半ぐらいからだったからね。こんなんでホールアウトできるんだろうかって感じなんだけど、うまくホールアウトできるんだよね。

 いやぁしかし、返す返すも痛かったね、2人とも。ジャンボも相変わらずアウト苦手だねぇ。ダボのオンパレードになっちゃうもんねぇ。うーん、なんかねぇ、あれだけ技術があって、頭がいいんだから・・・。

 2日目の2番のボギーってのはダボのイメージだね。で3番ダボでしょ。もう17回出てるからわかってるんだろうけど、50センチ、1メートルの差というのがそういう結果になっちゃうんだね。

 そういえば、オーガスタに立った時によく言ってるね、みんな。楽しむとかスマイルだとか、喜びだとかね。今回ジャンボもテーマを出してたよ。でも、僕からするとこれが大間違い。これはっきり言わせてもらえば大間違い。

 今回の過ごし方はジャンボも丸も正解だったと思う。どっちもありなんだ。リラックスしていこうが、挑戦してボールを打ちながらマスターズに向ってこうが、どっちでもいいんだ。

 それぞれの過ごし方はよかったんだよ。だけど、そのテーマが違うんだよね。なぜか。マスターズとかメジャーっていうのは楽しむところじゃないんだ。苦しむところなんだ。

 その苦しみに行ってくる、その苦しみを喜べる人間じゃなきゃダメなんだね。エンジョイしてきますじゃないんだよ。と・こ・と・ん・苦しむっていう感じ。そのとことん苦しんだ、その苦しさの向こうには絶対に喜びが残るんだ。

 例えば、むかーし父親に怒られたこととか、むかーし痛い思いをしたこととか、全部楽しい思い出で残ってるじゃない。じゃあその時ニコニコ笑ってたことってどれだけ覚えてる? ほとんどないんじゃないかな。

 だからマスターズに行く時、苦しみに行くんだ。それが、楽しみに行くとか、そういうことじゃないんだ。だから51歳でメジャーに出れる、あるいはメジャーで優勝を争う、そのことに対して自分は喜びを持ちたいって言ってたけど、そんなことじゃダメだよ。51歳だろうがなんだろうが、招待されて行ったら、マスターズに出たら、優勝狙って苦しまなきゃいけないんだ。

 だからコメント見るたびに、いまのスポーツ選手が多く言うよね、楽しみたいですって。僕はなんか違うと思うんだ。楽しめるか楽しめないか、楽しかったですって言えるのは、とことん苦しみ抜いてその4日間終わった時に、満足感、よかった、あの苦しい場面も、あの苦しい場面も切り抜けて、よかった。その満足感なんだ。

 だから楽しく楽しくとか、喜びとか言ってる時に、なんか危ないなぁ危ないなぁって感じがしてたんだ、実は。


(1998.4.24掲載)

あれがマスターズ

 丸山のマスターズのプレーでいちばん偉かったなぁって思うのは初日の13番だね。

 初日9番でバーディ取って単独トップになって、10番ボギー打ったよね。でその後11番、12番をうまくパーで切り抜けて、で2アンダーで13番に立った時に、まあ非常に難しいチョイスだったよね。

 2打目を刻んで3打勝負、サードで70〜80ヤードのアプローチをするか、それともセカンドで狙っていくか、その2つのチョイス、そうとう迷ったと思うんだ。迷ったというか、迷うっていう言葉じゃないな、悩んだかな。迷うという言葉と悩むという言葉は違うからね。

 で悩んで、まあその結局彼はチャージ、要するに2オンを狙っていこうっていうことに賭けたわけだけど、あのセカンドショット、たぶんZOOMを使ったと思うんだけど、あのセカンドショットはもう本人としてはいい当たりだったと思う。アゲンストの中、自信を持って打ったショットだったね。

 3番とか4番とかいうアイアンだったら、ピンの右からドローでグリーンの中央に乗せて、ドロー回転で少しでもピンに寄せてくっていうようなイメージがあるけど、ZOOMで打つ場合だったら、あの距離、残りフロントまで230ヤードちょっとあったわけだし、やはり左の出っ張ったところに乗せて、それでまあグリーンの中央か、段の下でもOKという感じだったろうね。

 よしんばそれがちょっと左に跳ねて、あの丸山のボールの落ちたところから3ヤードぐらい左のラインだったら、グリーンの左の溝に入るわけだけど、この溝がU字溝みたいになってる。

 その時点でいいライのほうに、要するにグリーンのスロープにつけばアプローチ寄せられるし、グリーン側じゃない、要するにバンカー側のスロープについたら、まああとはパーでいいやという気持ちだったんだろうね。

 本人はナイスショットを打った。セカンド打って、ボールの行方を、よしそこだそのまま行けっていう感じで見ながら歩き始めて行って、もう自信持ってたと思うんだ。でもあれがやっぱりグリーンの手前のクリークに入ってしまうというのがマスターズなんだよねぇ。


(1998.4.25掲載)

求められてない世界

 自信持って打ったボールがクリークに入ってしまう。それがマスターズだなんて書いたけど、逆に言うとそれが日本ツアーでやってる悲しさっていうのかなぁ。要するに日本の場合、グリーンの花道に落ちれば2オンするよね。まずだいたいのケースでは。

 花道から手前に戻ってしまってバンカーに入るとか、池に入るようなコースはまずないよ。たとえ太平洋御殿場の18番のグリーン左のエッジに落っこちても、エッジから2、3メートル手前でも、あるいは5、6メートル手前でも2オンしてくよ。でもそれが池に入ってしまうのがマスターズなんだよね。

 たった30センチ足らない、たった50センチ足らないだけでも池に入ってしまう。それがマスターズでもあり、逆に言えばエッジにキャリーすれば2オン成功という、要するに◎印を自分に与えてしまうツアーでやってる甘さっていうのかな。

 やはり2オンでもマスターズに関して言えば、ほんとにキャリーで、グリーンのカラーを越えて来ないと、カラーまで来ないと2オンしないんだよと。ところがカラーじゃなくて、カラーの手前、要するにカラーに届かないショットってのははじかれちゃうんだよね。

 あるいはまあ、あの丸山のショットが1、2ヤード飛んでればよかったと思うんだ。でもその1、2ヤードよかったかどうか、その1、2ヤード飛ぶか飛ばないか、その要するに厳密さというのが普段求められてない、自分達には求められてない世界なんだよね。だから彼にしても、なんで池に入っちゃったんだっていう感じだと思うけどね。

 で悪いことにクリークに落ちたボールがまた打てるライにあったよね。でも打てるライと言っても、あの彼のスタンスから見ると、バンカーの方向だろうね。フェイスを開いて、なんとかグリーンの方向にボールを打って、まあ乗せて、20メートルぐらいのパット残るだろうけどまあ乗せたいという気持ちだったろうね。

 ああやってフェイスを開いて、スタンスはバンカーの方向、でもフェイスはグリーンの方向。あれで土手が土でできてれば、思い切ってインパクトできるんだけど、土手がブロックでできてたでしょ、石垣で。あれはやっぱり打てないわ。

 やっぱり4日間戦うわけだし、あの場面で優勝争いっていうか、あの場面でサンドウェッジ壊すわけにはいかない。残りまだ3ラウンドあるわけだし、そういういろんな思惑ってのがやっぱりねぇ。あれ普通の土だったら彼は乗せてたよ。

 かえってあれが池に入ってたほうが、ボギーで収まったり、あるいはパーになるチャンスがあったんだよね。だからそこがマスターズだったなぁって気がするね。


(1998.4.26掲載)

あれがベストチョイス

 マスターズ初日の13番で丸山2オンを狙ったことに関していろんな人がいろんなことを言ってる。でも僕はすごく思うんだけど、みんな結果論だね、はっきりいって。これを討論しあうっていうのは、レバタラをいつまでも言ってるようなもんであって、現場で本人がチョイスした狙いっていうのはベストなんだよ。

 あそこに立って、その状況でよしと思って選んだクラブっていうのは、もうそれ以上の最善の策はない。例えば彼がもしティーショットを、極端な話で言えば右の林だとか、左のクリークぎりぎりのところでスタンスも取れないようなところから2オン狙うっていったら、これはもう無謀だよ。それはもう絶対にいけない。それはもう狙わないほうがいい。

 中にはそれでも狙ったほうがいいっていう人がいるかも知れない。でもやはり有名な心理学者の言葉に“弱い人間ほどピンチになった時に攻撃的になる”っていう言葉がある。

 で彼の状況で2アンダーで、トップに1ストローク差で、そのフェアウェイのど真ん中で、そして11番、12番をパーで切り抜けてきてて、彼は決してピンチにいるわけじゃないんだよね。ピンチにいるわけじゃなくて、しかも230ヤードそこそこ。で、自分がいけるっていうふうに判断して打って狙ったショットに対して、もう後は何も言っても無駄。

 要するにそれがよかった悪かったっていうね、そんなことを言ってたらマスターズに行ってる選手がかわいそうだよ。それをピーチクパーチク言う、まあこの言葉は悪いけど、やっぱりそれだからゴルフファンとして、話がつきないおもしろさはあるんだけどね。

 ただ彼のチョイスは僕はベストだったと思う。だからそのベスト、自分が刻もうかな刻もうかなと思っていながらZOOM持って、で池に入れたんだったら、14番、15番をパーパーで行けないって。

 そんなバカげた後悔しながら、その次のホールへ行ったら、そんな弱い気持ちで行ったら、簡単にボギー・ダボ・トリプルが出ちゃうんだ、あのコースは。だから彼はそこで自分が選んだショットっていうのがベストなんだという気持ちがあるから、14番、15番をパーパーで切り抜けてるんだね。

 オーガスタの13番、15番のセカンドに立った時の決断っていうのは、行った人間、要するにプレーした人間じゃなきゃわからない。でさらに、あえて言わせてもらえば、解説してた村上さんとか、飛ばない人間にはわからない。飛ばない人間には絶対わからない。

 刻めばよかったんですよねぇとかそんなこと言ってるけど、あそこを2オンできる人間じゃなきゃ、やっぱり優勝できる可能性はないんだ。で、そこを2オンできる飛距離を持った人間があそこに行った時に、どれだけの判断する勇気っていうかな、その勇気を持ってその判断に決着をつけて、で自分が進んでく。その心理たるや、はっきりいって解説してる人間になんてわかりゃしない。

 まあ何度も書くけど、僕はほんとにあれがベストだと思うよ。


(1998.4.27掲載)

世界一難しいショートホール

 今日はオーガスタの話を書こう。初日すごい風だったよね。テレビの映像で見ててもわかるように、バンカーから砂が舞うぐらいだった。あそこの砂の粒子は細かいから飛ぶんだ、ぴゅーーと。

 あんな風吹いたことないって言ってる人がいたけど、いやぁ吹くんだ。特にマスターズは、雨の降った次の日は吹く吹く。12番のショートがあるでしょ。あのショートホールを5番アイアンか6番アイアンかで迷った記憶があるもん、僕。

 セベがたまたま優勝した時だったの、その時。で、セベがちょうど僕の後ろを回ってたんだ。その時確か3日目だったかなぁ。でその時に人のクラブをじーと見に来るんだよ。12番詰まってるから。何番で打ったのかなぁっていう感じで。でわざわざクラブ覗いて、まあこっちも見えるようにしてやってね(笑) 確か5番で、5か6で軽く打ったように思うんだけどねぇ。

 であの12番は初日、風が右から来てた。右から来てるとティーではややアゲンストに感じる。でやはり手前の池は怖いから、ちょっとでも届かなければ、バックスピンで池だからね。やっぱりグリーンにキャリーしたい。で感じる風がアゲンスト。

 そして上空は右から左に流れてる風なんだね。ところがティーにはアゲンストでちょっと気持ち来る。ところが悪いことに、旗は左から右向いてるんだ。だからあの風が吹いたら、世界一難しいショートホールになる。少なくとも僕が知ってるゴルフ場の中で、世界一難しいショートホール。

 風は右から左、ティーグランドではアゲに感じて、フラッグは左から右に流れてる。だから左オーバーしちゃう選手が多いんだ。だからあの風吹かれたらたまらんね。


(1998.4.28掲載)

オーガスタのショートホール

 オーガスタの12番ホールのグリーンの縦の幅は、いちばん細いところで7ヤードぐらい。左のエッジから右の奧までは20ヤード近くあるんだ。まあ17、18ヤードあるんだね。左のフロントエッジから右のエッジ。

 ただし、左のエッジから左の奧のエッジまでが11ヤードか12ヤードぐらいある。で真ん中が7ヤードぐらい。で右がやっぱりまた10ヤードぐらいしかない。要するにティーから左のエッジまでと右のエッジまでの差というのが10ヤード近くあるんだ。

 だから右打ちの人間にとって、右に行ったボールっていうのはやはり当たりが薄いから、キャリーが出ない。だから、池に入りやすくなる。あれが反対に右手前があって左が奧になってれば、もっともっとやさしいショートホールなんだよね。

 あのホールをやさしく感じるのはフィル・ミケルソンだろうね。つかまったボールはどんどんキャリー出てくれるから、要するに彼で言えば右に行くボールはどんどんどん距離が出てってくれるわけ。だからミケルソンにとっては、右打ちの選手ほどあそこの難しさは感じないだろうね。

 でマスターズのショートホールは、全部のショートホールがたいがい、16番以外は、右に行けば行くほど難しくなっちゃうんだ。4番がやっぱり右のフロントエッジと左のフロントエッジを比べると右のフロントエッジのほうが遠い。だからしっかり打たなきゃいけないっていう気持ちになる。

 で6番もそうなんだ。6番は全体的にほとんどまあ丸に近いんだけど、実際は右のグリーンっていうのがグリーンじゃないんだよね。もう絶壁になってるから、右の段の上っていうのは、実際そこの段の上までキャリーしなかったら、右のグリーンのエッジなんか、グリーンにちょこっと乗っかったって全部出ちゃうんだ。

 だからやっぱり同じように右に行ったボールは飛ばないけど、ピンに向ってまっすぐ打ってったら、いいショットしたら寄る。ただし、少しでも逃げる気持ちがあったら寄らない。オーガスタのショートホールはこんな感じだね。であの風があったから、とにかくもう、みんな神経使いまくって回ってたと思うよ。


(1998.4.29掲載)

“出場が夢”では優勝できない

 風といえば、あの風の中、みんな神経使って回ってた中、ニクラスががんばってたね。ニクラスはね、もうマスターズ知ってる。あの大風が吹いてもやっぱりコースに逆らわない。

 それからもう1つはやっぱり、グリーンジャケット持ってる人間の強みだね。これどういうことかっていうと、やっぱり優勝したことがない人間と優勝したことがある人間は、もう最初からハンデがついてるんだ。

 やっぱりね、マスターズって物に毎年出られればいろんなことができる。例えば、例えばだよ、14番で2日目にピンが切ってあった位置の右手前でグリーンから戻ってきちゃったと。であの時にグリーンジャケットを自分が持ってる人間だったら、ランニングアプローチでいこうか、2クッション3クッションでいこうか、それともハイピッチはあり得ないけどハイピッチで打とうか、様々なチョイスができる。予選落っこちたって来年出られるんだもん。

 ところが、招待されなきゃ出られない、資格を取って招待されなきゃ出られない選手っていうのは、そんな悠長なこと言ってられないんだ。言い換えれば、大学でもそうだよ。すべり止めを受けておいて東大を受けるようなもんだし。

 うちのかあちゃんの幼なじみに、東大京大をぽんぽんと受けておいて、両方とも通っちゃうような人がいるんだけど、そんな人間がすべり止めを考えてじゃあどこいこうか、どこ受けておこうか、慶応か早稲田か・・・なんだか知らないけど世の中そういう頭のいいやつがいるんだよね。

 話がそれた(苦笑) 例えば、それこそセベなんか、ここんとこのあの成績でいけばマスターズに招待される選手じゃないよ。でも出られちゃうんだ。その点ジャンボにしても丸にしても、ハンデが最初からあるんだから、楽しもうと思ったって無理だって。

 でまた、来年の出場権を狙いに行くっていうこと自体が、変なものを感じるよね。なんのためにマスターズに出るんだって。来年出るために出てくのか。そうじゃないよね。優勝争いをして、あわよくば優勝しよう、そう思って出てくわけだ。ところが来年の出場権を得るために出てく、とりあえず来年の出場権が最低線のラインだ、または予選通過が最低線、そしてよければ来年の出場権を取る。あわよくば優勝争いしよう。どれを目標にしていいかわかりゃしない。

 だからね、マスターズに出るのが夢だっていう選手がいるよ、たくさん。でもそういう選手は絶対マスターズで活躍することはできないね。マスターズで活躍じゃないな、優勝することはできないだね。夢がそこだから。小さい頃からマスターズに出ることが夢でしたっていう人間は、出られることによって叶えられちゃったんだもん、夢を。


(1998.4.30掲載)

50年経っても……

 マスターズ本当の意味での優勝争いができる選手が出てくる時、これはマスターズで優勝するのが夢でしたっていう人間じゃなきゃダメなんだ。そういう子供達じゃなきゃいけない、そういう若手でなきゃいけない。

 昨日も書いた通り、出ることが夢というのは、出ただけでもう叶っちゃっうんだから。自分はマスターズでグリーンジャケット着ることが夢ですっていう人間じゃなきゃ優勝争いできない。

 中島常幸は18歳で日本アマに勝ったんだ。その最年少記録っていうのは25年破られてない。25年っていうと四半世紀だよ。マスターズで7アンダーっていうスコア。この記録も持ってる。67っていう1日の最少スコアも持ってる。

 マスターズではアンダーパーを2回記録してるんだけど、7アンダーっていう数字、スコアを破る選手は現状出てこないね。たぶん50年やぶられないと思う。半世紀。いまのまま行けば。

 7アンダー出したのは1991年のマスターズ。それから50年と考えると、2041年だよ。ということは、日本人はこれから先、2041年まで記録を破る選手が出てこないんだよ、現状のままいけば。

 だからマスターズでグリーンジャケット着るのが自分の夢ですという選手が出てくるか来ないかが問題。なぜそうかっていうと、マスターズでグリーンジャケット着るのが夢ですっていう選手は、いろんなとこで育つ。

 日本ツアーだけじゃない。アメリカもヨーロッパも、そのミニツアーも、あるいはアフリカサーキットも、自分の選択肢を最大限に広げていって、インターナショナルに育っていくんだ。

 だから丸山がいみじくも言ったよね、日本にこういうコースはないって、未知の世界だって。そういう未知の世界、別世界で育ってる限り、いつまでたったってそりゃ無理だ。別世界で育った最高峰で7アンダーが最高なんだから、そこで育ってる限り、50年たったって抜けないね。


(1998.5.12掲載)

途方もなく強かった

 世界に通用する選手という話をしたかというと、実は今年のマスターズの2日目の中継見てて、まあちょっと悔しかったんだ。2人が予選落ちしてね。でワイン1本飲みながら(苦笑)、いろんなことを考えてね。

 その時、家内にも話したけど、未だかつて5大大会勝った、まあ5大大会っていうのは単純に日本だけで言うんだけど、日本アマ、日本オープン、日本プロ、日本マッチプレー、日本シリーズね。これらを勝った選手って僕しかいないんだ。で25年、四半世紀も記録を破られていない。それにマスターズで7アンダーも出した。その時の優勝スコアは11アンダーのイアン・ウーズナム。そういう僕があえて書きたい。

 僕もマスターズに出るのが夢だった。そして、マスターズに出た。

 小さい時、中学生の時ね、マスターズ中継見てから学校に行った。その頃は石井さんの名調子でね。今の松下さんはいっぱいミスしてるけど、もういいかげんにしろよってぐらい失敗してるけど(苦笑) それはともかく、石井さんのテレビ中継を見てから、学校に行って授業を受けながらも、オーガスタの15番の美しさ、そこでニクラスが1番アイアンとか2番アイアンで、ピン側イーグルチャンスにつけて、何回かイーグルを決めたり、16番で超ロングパットを決めて、躍り上がりながら優勝を決めたような、そんなような場面を授業を受けながら思い出してた。

 いつか自分もマスターズに出たい。マスターズに出るのが夢だってそう思ってた。で23歳の時に初めてマスターズに出た。その時にマスターズ、あるいは世界のメジャー、これが世界なんだっていうふうに思い知らされた。

 その時に自分に足りない物は何か、自分に何が必要なのか、それをじっくりと考えさせられたね。そして幸運にもまた日本で活躍できて、また招待されて行くことができた。いちばん最初に、そのリングに立った時にはいきなりマスターズのパンチくらってノックアウトされたけど、次行った時には、少なくとも1発返せたって感じだった。でも途方もなく強かった。

 でも、前にも書いたけど、出ることが夢である選手はそこまで。善戦するまでだよ。善戦はするけれど相手をKOはできない。だから出るのが夢だなんていう選手は、極論すればそこまでだよ。

 その本人が本当にグリーンジャケット着るのが夢です、夢なんだと、そう思って育っていかないと無理なんだ。そしてそういう選手はやっぱりインターナショナルに育つんだ。


(1998.5.13掲載文から抜粋)

窓の向こうの壁を見ながら……

 マスターズに初出場で好成績っていうのを納めた人ってのはいないわけだし、まあタイガーとかファジー・ゼラーは別にして、特に日本から招待された選手っていうのは、初出場っての場合、まあ予選通るほうが珍しいぐらいだね。

 昨日も書いたけど、僕の場合はやっぱり初出場で出た時に、ほんとにあぁこれが世界なんだなぁっていうことを実感させられた。じゃあそれに向ってどういこうか、どういうところが足りないんだってのを、ものすごく自分で見つめ直したねぇ。


(1998.5.15掲載)

丸山が経験をどう活かすか

 今年のマスターズ丸山は初出場だったわけだ。で初出場で好成績っていうのは難しいわけだし、そういう点ではやっぱりこれからの人生に今回の経験を活かすしかないと思うんだ。

 一昨日全英オープンの話を書いたけど、ほんとにあの時はもう、何をやってるんだって自分は、って感じだったねぇ。ボギーでもいいじゃないか、3パットのボギーでもいいじゃないか。あの状況から2パットのパーでいくっていうのがどれだけ難しいかわかってるだろうに、なんであそこからパーを狙ってくんだ。

 要するに17、18メートルのパット、しかも2段のこぶが斜めにあるパットだよ。要するにフックして1段目のこぶ、次の2段目のこぶ、それが斜めに入ってて横向きに入ってる。そこから最後、直線のややスライスで、最後に大きなこぶがあって大スライスしてく。そんなパットどうやったって寄らないんだよ。

 でも、そのパットをなんとか2パットでいこうとして攻めてくのがプロなんだ。それこそ丸山がマスターズ初日13番で2オン狙っていったように、ジャンボが11を叩きながら15番を攻めてったように、中島が13番13を打ちながら攻めてったように打っちゃうんだ。1打でも少なく上がろうとするのが、プロの本性なんだ。

 まあ話を全英オープンに戻すけど、バンカーの中からばかすかばかすか打って、もう中島バンカーって言われたぐらい、バンカーに名前がついたりして、もうホテルに帰って涙が出て、で、そこでやっぱりこれが世界で戦うタフさ、必要で最大の物っていうかな、タフ、それが必要なんだなぁっていうふうに思ったね。

 結局のその時の全英オープンは次の日1アンダーで回って、通算イーブンパーで、青木さんが7位、ジャンボが10位、僕が17位だったけどね。やっぱりみんな打たれ強かったっていうのかな。やっぱり打たれ強くならざるを得なかったしね。

 だから丸山もね、丸もほんとメジャーの中でいちばん厳しい、ある意味でいちばん厳しい、要するにラフが深かったり、コースが長かったり、そういうもんじゃなくて、ある意味でいちばん難しいマスターズを味わったんだから、これを活かさないっていうのはやっぱりいちばん彼にとってはマイナスなんじゃないかな。

 予選落ちたこと以上に彼がマスターズから学ぶことがあるかないかが大きいことだと思うんだよね。僕と同じように、彼が考えさせられて、マスターズで出された課題を、問題を解いて、答を返していけるかどうか。

 やっぱりそう考えると、メジャーというのがゴルファーとしての資質を育てるね。だから、丸山の意識というのが、今年の経験で変わってほしいね。日本という狭い土壌で終わってしまうのは、プロもファンも望んでないからね。


(1998.7.6掲載)

何回も行ける選手になれ!

 暑いねぇ。でも2日目のほうが暑かった。3日目と最終日はまだ風がちょっとあったから楽だったね。まあ確かに暑い、暑いけども、暑いのはもう慣れっこだね、僕たちは。そんなね、暑いから回ってられないなんて言ったらプロゴルファーできないよ(笑)

 なんでも群馬は40度越えたって話だけど、いやもういっそのこと50度ぐらいいってほしいね(笑) レコードもう絶対に越えられないレコードを作ってほしいね。

 さて、もうすぐ全英オープンが行くわけだけど、イギリスよりも彼の場合頭の中にまず入れてほしいのはマスターズってことだね。イギリスも確かに大事なことではあるけど、やっぱり彼の場合はマスターズっていうものを頭に入れて、何回も出る選手になってほしい。

 まあそりゃあ確かに、自分自身がマスターズ、じゃあどうでもいいのかって言ったらそんなことないんだよ。そんなことないんだけど、じゃあ中島が終わった後、ミズノで誰もマスターズに行く選手がいないのかって言ったらそれはさみしすぎる。

 じゃあ日本の若手の中では、やっぱり彼はオールラウンドだし、またファンの層もオールラウンドだよね。だからそういう人間がどこまでマスターズにチャレンジしてがんばっていけるか。そういうことを考えると、今年よかったから1回行って終わりましたじゃダメなんだぞと、とりあえずマスターズ一回行っていい成績でるほど甘くないんだから、何回も行ける選手になれってことは話はしてあるんだ。

 まあプロに限らず、アマチュアの人も、マスターズをその場で見るか見ないかっていうのは・・・どう言ったらいいかな。例えばエジプトのピラミッドは有名だよね。スフィンクスも有名だ。あるいはナスカの地上絵も有名だね。でも行ったことがない人ってのは、やっぱりテレビのブラウン管でしか見たことない人なんだよね。

 ピラミッドの下に立って、ピラミッドの石に手を置いて、ピラミッドのてっぺんを見て、あるいは上っていって、なんてことをするのとは全然違うわけだね。要するに行って実際に見れば3次元。行かなければ2次元なんだね。立体感がない。

 だからマスターズに行ってみたら、いちばん簡単。あぁマスターズってこうなんだ、メジャーってこうなんだと。またマスターズといい、全米オープンといい、全英オープンといい、みんな違うんだなぁ。もし実際に見にいける人はほんと行ったほうがいいね。


(1998.7.23掲載文から抜粋)

お騒がせしました

 そういえばオーガスタで思い出した。とっくの前に書いた気がしてたんだけど、なくしたって言ってたマスターズのバッジ、練正館の芝生の上にね、なんか踏まれて・・・ありました(苦笑)

 あれはピンバッジだから、ネクタイピンのように刺すところが釘みたいに出てるんだけど、そこがひん曲がっててさ(苦笑) まあそれもちゃんと直して、いまはきれいに飾られてます。お騒がせしてすみませんでした。もう情けないやら・・・。

 厚木で懇親会開いた時にないないって言ってたんだけど、あれから2週間か3週間後に出てきたんだ。僕も西遊記にアクセスしてて、なんで「お知らせ」コーナーにまだバッジのことが出てるんだろうなぁ?とは、思ってたことは思ってたんだけどね(苦笑)


(1999.3.1掲載)

マスターズの解説

 リニューアル後、最初の西遊記・・・どうしようかねぇ、マスターズストーリーは。実はあんなに反響があるとは思ってなかったんだよね(苦笑) 最初はぜんぜん反響がなかったから、このまま無事に2ホールで終われるかなぁと思ったら、なんか、掲載し始めてしばらくしてからだんだん、楽しみにしてますとかいうような反響が出てきたから、うわぁ〜どうしよ?って感じになっちゃったよ。

 そうそう、なんで始めたんですかっていうメールが来てたけど、あの中で書いた通り、要するにみんなを連れてオーガスタのロープの中を回ってみたいという気持ちがあったんだ。まあそれを1つの答としてもらいましょう。

 で実は、今年、マスターズの解説を頼まれてるんだ。でも石井さんのように、それを最後の最後まで仕事としてやってた方なんかもいるわけだし、自分には解説なんておこがましいからって、ここ数年ずっと断ってたんだ。

 ましてや僕の場合、西遊記の読者のみなさんはわかると思うんだけど、見ると聞くとじゃ大違いというところがあるよね。一見固そうなイメージで見られがちなんだけど、その実は「だよね」というような言い方をすると。だけど、解説となると「ですよね」とかそういう言葉を使っていかないといけない。そうするとなんかだんだんわけがわからなくなっちゃって、何言ってるんだかわからないとか言われたらいやだなぁとか、まあそういうこともあってずっと断ってたんだ。

 でも自分がゴルフの世界に入ったというのは、やはり子供の頃に見たマスターズだったわけだし、このへんで恩返しといってはなんだけど、マスターズに関してはやってみようかなぁと思ってるんだ。周りも、マスターズでアンダーを出したり、優勝争いをしたりしたのは僕だけなんだからって、一生懸命説得してくるんだよね。そういう日本人は中嶋だけなんだから頼むよぉ、みたいな感じでね(苦笑)


(1999.3.2掲載)

マスターズが僕を育ててくれた

 マスターズの解説は、なんていうか、ほんとにもう逃げ場がないって感じですよ(苦笑) まな板の鯉になりたくないっていうのに、まな板の鯉どころか、どっか人気のないところに逃げていきたいっていう感じ。打ち合わせなんかしてみてもやっぱりこれはたいへんだねぇ。

 で僕自身がやっぱり、解説で生きようっていう気持ちがないんだよね。だからよけいダメなんだ。自分自身が心のどこかで解説をやろうっていうふうになれば、自分を変えていけるんだろうけど、自分自身が解説をやろうっていう気になってない。

 僕はやっぱり選手として一生を終わりたい。だから自分が選手を終わる時、もう完全に自分が選手でなくなった時は、ブラウン管に出る側じゃなくて裏方に回りたい。それこそほんと、マスターズに行って優勝を狙えるような選手を育てたいとか、そういう方向になりたいんだ。だからブラウン管に映って解説でああだこうだ言うっていう気持ちはないんだ。

 ただ昨日もちらっと書いたけど、このホームページでやはり言っておきたい言葉なんだけど、僕は中学高校と、特に中学の時かな、マスターズのテレビ中継を見て、そして僕の父親もマスターズに出るっていうのがでずっとやってきたこともあって、ほんとそういう点では、マスターズがなかったら、自分自身が今のようなゴルファーにはなれてなかったと思うんだ。

 仮にもやっぱりAONって言われた人間にはなれなかったと思う。そういう点で、マスターズっていうのは自分自身をほんとに育ててくれた大会であるし、ある意味ではマスターズに対して恩返しをしなければいけないなっていうふうに思うことも事実なんだよね。


(1999.3.3掲載)

プレッシャー以外の何物でもない

 解説者として自分が評価されたいために、マスターズの解説をするっていう気持ちはないんだ。そうじゃなくて、昨日書いたように、恩返しがしたいんだね。

 僕が中学の時に見たマスターズ中継。15番ホールでニクラスが1番アイアンでセカンドショットして2オンしたシーンや、16番のながーーいショートホールで、その時は右の奧にピンが切ってあって、乗ったのが下の段で十何メートル、その長いパットを入れて飛び上がって喜んでたシーン。そのパットで、ジョニー・ミラートム・ワイスコフを振り切って優勝したシーンだとか、そういうシーンが頭に焼き付いてるんだよね。

 もうその日は学校に行っても、その興奮っていうのが続いててね。学校の授業を受けてても、先生の話なんて上の空なんだから(笑) やっぱりあのきれいな緑のマスターズの残像が残っちゃって、黒板さえももう緑色に、グリーンに見えちゃうぐらいだったからねぇ。

 そういう点で、なんか自分がそういう気持ちになってゴルフをやってきたんだから、恩返ししなきゃいけないのかなっていうふうに思ってる。ただそれだけなんだ。

 僕は思うんだけど、例えば青木さんみたいなすばらしい解説っていうのはできないと思う。青木さんの解説はやっぱりすごいもんね。見てて非常にわかりやすいし、普通の解説者の捉え方とぜんぜん違うから見てて新鮮だし、いい意味でユニーク。青木さんはそういうものを感じさせてもらえるからいいんだけど、僕なんかは今回が解説をするのが初めてだしね。

 だからほんとのところ、プレッシャー以外の何物でもないんだけど、ほんとそれで自分のやることが役に立つんだったら、それはそれで光栄だし、恩返しのつもりでやってもいいかなっていうふうに思ってるんだ。


(1999.3.4掲載文から抜粋)

解説の難易度が高いトーナメント

 それはともかくとして、マスターズの解説でどういうところを伝えたいかっていうことが自分自身の中でまだ整理されきってないんだ。例えばゲームなのか、それともオーガスタというコースのことなのか、歴史なのか、あるいはそのブラウン管で見られない部分、みんなが見るブラウン管外のことなのか。

 いろんなことを考えるんだけど、やっぱり僕が思うに、コースだと思うんだよね。オーガスタのコースを、みんなが歩いてるような感じで解説できたらなぁって思うんだ。ある意味ではカメラっていうのは、ロープの中に入れる唯一のギャラリーだから、そういう点でそれをうまく見せてあげられたり、伝えてあげられたらなぁって思うんだけど、いかんせん難しい。

 なぜかっていうと、1つには、USオープンや他のトーナメントみたいに、ロープの中に入っていけない。フェアウェイを横切って、芝生をなでたり、ターフの跡を見せたりっていうことができない。こればかりはいくら取材陣、あるいは報道のテレビコメンテーターとはいっても、大会中はロープの中に入れないんだ。

 ここんとこだけはどうしようもできないことだね。特に日本のTBSのように映像をもらってるテレビ局ではどうにもならないし、だからちょっとその辺で他のトーナメントよりも、はるかに解説の難易度が高いトーナメントだね。

 せっかくだからここで、僕が解説するにあたってどんなことを聞きたいかをメールで送ってもらえるといいな。ただし、一言つけ加えておくと、みなさんの期待に応えられるかどうかは保証できません(笑)


(1999.4.1掲載文から抜粋)

結局上いきやがって(苦笑)

 さて、今日の飛行機でオーガスタに行ってきます。13日ぐらいに帰ってくる予定。まあマスターズの解説がうまくできるかできないかなんかどうでもいいから、あっこういうこと聞くのは初めてだっていうのをできたらいいなって思う。こういうホールの説明だとか、こういうことは初めてだなぁっていうのを出したいなって思うね。

 で向こうでひょっとしたらオーガスタを回れるかも知れないんだ。たぶん回れるとは思うんだけど、実際回ってみたほうがやっぱり、新しく変わったオーガスタの話もできると思うし、難易度もわかってくるしね。今年は初めてラフが作られたっていう話だよね。ボールがちょっと隠れるぐらいのラフだっていうんだけど、でもオーガスタって考えると、すごく脅威的な難敵だね。


(1999.4.2掲載)

マスターズ解説の方針

 この西遊記を通じて、みなさんからいろいろ解説についてのメールをいただきました。どうもありがとう。内容はあれやこれやでたくさんいっぱいあるんだけど、でもはっきりいって・・・僕のやりたいようにやらせてもらいます(苦笑)

 もちろんいただいた意見は一通り目を通しました。ただその意見を覚えてたり、その意見を言おうと思ったりすると自分らしくなくなっちゃうんで、参考にはさせてもらうけどもはっきりいってあまり期待しないでくださいと(苦笑)

 ただ基本的な方針として、自分だったらどう攻めるか、自分だったらどこからどうやって攻めるか、そして、その画面に映ってる選手が、どうしてそういうような、例えば僕の解説と同じ攻め方をしたら、あぁやっぱりそうでしょうとか、違う攻め方をしたら、彼の考えでいくとこういう考え方でいったんでしょうねとかいうようなことは言いたい。

 ミスをしたらそのミスの第一原因みたいな、要するにその置かれてる状況からくるミスの原因を深く、まあ簡単ではあるけれど深く解説してみようかなと思ってます。

 まあどっちにしても、オーガスタに対する、マスターズに対する思い入れっていうのは深いもんだから、最終的にはしどろもどろになっちゃうんじゃないかっていう気がしてるんだけどねぇ(苦笑) まあそれをメインにして、あとは技術的な話も1つ2つ入れてみようかなぁと。

 アメリカの特徴的な最近の技術的な流れっていうのもあるし、やっぱり向こうの有力選手はほとんどそのパターンでいってるから、もし技術的なことで参考になるようなことがあったら、それも含めて言ってみたいなって思ってるんだ。


(1999.4.5掲載)

オーガスタのラフ

 さてどこよりも早いマスターズレポート“その1”いくぞー。現地時間金曜日にオーガスタ回ってきたんだけど、新しく作られたラフというのはそんなに思ったよりも深くない。だいたい日本のツアーでいうと、フェニックスのセミラフぐらいかな。そんなにフライヤーするとか、あんまりフライヤーを怖がるようなラフっていうんじゃなくて、どちらかというとまだグリーンに止めることができるっていう感じだね。

 ラフとしては難易度は低いほうだね。ただしやっぱりオーガスタのグリーンに対してだから、そのぐらいで十分なのかなっていうところもあるけど、思ったよりは浅い。ボールが入ってもだいたいボールの上3分の1は出てる。

 むしろフジサンケイとかクラウンズのフェアウェイのほうがフライヤーしてくね。高麗芝の茎が出てるほうが、よっぽど球がジャンプする。そういう点ではまだ楽だけどね。

 今年から2番ホールと17番ホールのティーグラウンドが20ヤード下がったっていうんだけど、感覚的には20ヤード下がった感じはそんなにしない。イメージとしては10ヤードぐらいかなっていうぐらいの感じだけど、数字上は20ヤード下がったというところかな。

 この金曜日のラウンドはティーマークに関係なく、ほとんどフルバックで回った。いやぁ、なかなか、やっぱりマスターズだよ。ベニーっていうこちらのキャディさんがついてくれたんだけど、例えば3カップとか4カップだっていうラインを教えてくれる。わかるんだ、頭では。37年もここでキャディやってるんだから、あなたの言う通りだろう、その通りだ、正しいというふうには頭の中では理解できるんだけど、体がそこへ向けないんだよね。そう見えないんだ、これが。


(1999.4.6掲載)

オーガスタのグリーン

 やっぱりオーガスタのグリーンというのは、そこが独特っていうか、アメリカのツアーの中でも独特なんだね。アメリカツアーの中でマスターズに近いものはあっても、これそのものはない。

 日本でこれに近いものって言ったら、唯一太平洋マスターズだけかな。だから太平洋が年間に1回しかないから、その1回だけでマスターズっていうのがどうにかなるもんじゃないね。だから、たぶんジャンボにしても丸山君にしても、うわぁ〜またこのグリーンだっていうような感じなんだろうね。

 まあそんなこんなでオーガスタ回った、生のいちばんホットな情報を書いたけど、ラフはそれほどでもないけど、影響のあるホールもある。たかだかそれだけのラフでもね。ただし逆にラフができて、グリーン周りでロブショットができるケースもできてきたから、若干それによってプラスになったところもあるかなっていう感じがあるね。

 だから相対的に見れば難易度は上がったんだけど、どこもノーチャンスかっていうと、逆にラフができたおかげで80%難しくなったけど、10%やさしくなったかなという、そういうところがちょっとあったね。

 たぶんトーナメントウィークになったら月曜火曜とグリーンを固めてくるから、まあ条件次第ではあるけど、去年より難しい要素のほうが増えてくる。だから言い換えれば3歩下がって1歩進むみたいなところかな。そういう点ではスコアとしては去年よりは難しいだろうね。

 やっぱりグリーンが硬いかやらかいかっていうのは、ツアープロにとっていちばん難易度が上がるところだから、たぶんマスターズもグリーンが早くなってきて難しくなるだろうね。


(1999.4.11掲載文から抜粋)

わかりやすいかなぁ?

 さてそれはともかく、マスターズのテレビ中継わかりやすいかなぁ? そんなに難しい技術的な解説してもわかんないよね。例えばノーマンのここがこう変わってああ変わってとか、そういうのはほんとに小さなチェックポイントだから言ってもわからないと思うので、極力わかるぐらいの範囲で言ってるんだ。

 でも、子供の頭を越えて向こうに届くぐらいですよとか、なかなかだったでしょ(笑) 2日目のオラサバルの、15番ホールの奧からアプローチなんて、言った通りぴったりでしょ(笑) あれは8、9番アイアンあたりでやったらしいんだけど、ちょうど2、3メートル手前からとんとんとんという感じですよというふうに言ったよね。でやっぱりとんとんとんというような言葉出ちゃうんだよねぇ。でもそのほうがわかりやすいよね?

 でもほんとも予選通ったしよかったよね。2日目のスタート前に、69出せばワンチャンスあるぞって言ったんだ。まあ69でも70でも風強かったからチャンスあるぞと。あとはほんと2日終わって、油断しないでがんばってくれよって感じだね。


(1999.4.12掲載)

すっごいチェック

 しかしつまんないよ、ロープの中じゃないから。やっぱりプレーしてるほうが楽しいね。つまんないって言葉はちょっと変だけどね。解説も楽しいけど、プレーするほうがぜんぜん楽しいってことだね。

 放送席のお二人はもうほんとに熱意のある方だから、ついついたくさん言葉が出てくるんだ。だから極力しゃべらないように心がけてるんだけど、僕がしゃべんないと2人がどんどんどんどんしゃべる。だから僕が話す時には両手で2人をさえぎって話したりするんだ(笑)

 しかし言葉遣いが若干、うんそうねぇ〜とかなっちゃうのはご愛敬で許してもらうしかないかな。そうですねとか言えればいいんだけど。これはいちばん最初に注意されたところなんだけど、そんなこと言ったって僕は知らないって言って今回やってるのよ。自分の方法で、自分のしゃべり方でやるよって(笑)

 今回マスターズで感心したのは、携帯電話が全部チェックされて没収される。中に持って入れない。電源切るとか切らないとかいう問題じゃなくて、入場者全員、空港で入るゲートみたいなのででチェックされて、そこで預けるんだ。中では一切持ってちゃいけない。だから電話の音が1つもないんだね。

 その他、入る時は、いちいち持ってるバッジを機械に通すんだ。クレジットカードを払う時にピッと通す機械があるよね。ああいう感じの機械を通す。で、もしそこで不正に仕入れたバッジ、要するに偽造バッジがあったら、そこですぐチェックされる。誰が売って、どこで買って、誰どうだとか、全部いもづる式に出てくるんだ。すっごいチェック方法だよ。僕達はテレビのバッジ持ってるんだけど、放送関係者であろうとも毎日毎日玄関を通る時にチェックされる。いやぁすごいね、マスターズは。

 ちなみに書いておくと、マスターズのギャラリー収入は1日1億円だって。1週間で7億円。7億円のギャラリーチケット収入、それにプラスアドバタイジング、売店だとかそういう物を含めて、全部で10億円以上。放映権その他すべて含めると30億円近くいくらしいよ。


(1999.4.22掲載文から抜粋)

悔いの残った言葉

 いやぁそれにしてもやっぱり解説っていうのは疲れるねぇ。ほんとこの場を借りて、西遊記のみなさまにお伝えしますけど、やっぱりマスターズの解説を今回受けて、結果的にというか、後になってみればやってよかったかなというのが正直な印象なんだけど、もうちょっとこれも言いたかった、でもこういうのは言いたくなかったっていうのが両方入ってたね。

 だから自分では、あぁこういうのは言いたくないなっていうような、例えば丸山選手が予選を通るか通らないか、ちょうど当落線上にいたわけだね。初日78も打って、やっぱり予選通らないかも知れない。ある意味では切れて、もう2日目もいいかげんなプレーになりがちなところだけど、中嶋プロも何回も来て、このコースやっといいスコア出るようになったんだよってことを伝え聞いたらしいんだ。

 まあそれもあったんだけど、どっちにしてもいいスコアで回れるか悪いスコアになってしまうっていうのは気持ちの持ち方一つだよね。でまあそれがいいスコアで、彼なりにオーガスタの中でベストスコアで回ってきて、でアンダーパー出して予選通るか通らないかというそういう中で、気持ちとしてもやっぱり日本人で、彼も日本の選手だし、応援したくなる気持ちがあった。

 まあそんな中でワトソンが16番ホールで右のバンカーに入れた時に、やっぱり自分と同じプロスポーツ選手、同じ現役の選手として、まあ年はワトソンのほうが少し上だけど、いやぁワトソン、こんなことを思ってはいけないけれど、ワトソンさんお願いしますよ、ここボギーでもよしとしてください、というような感じで言ってしまった言葉っていうのは、やっぱり自分でもすごく悔いが残ってるね。


(1999.4.23掲載)

もう一度あの感動を……

 マスターズの解説、逆に言うともっと言いたかったこともある。例えばノーマンの12番ホール、あるいは最終日のバックナイン。ノーマンが自分としては100%の自信じゃなくて、しかもあそこまでケガからカムバックしてきた。オラサバルにしたってそうだよね。

 そういう一つのプロ選手、あるいは男と男としての、あるいはスポーツマンとしての戦いを見る中で、もっともっと自分の表現が足らなかったかなという部分もあった。でもそんなつまらないことも一切なしで、個人的な意見、解説とかそういうものは別にして、黙ってそのトーナメントを見るってことがいちばんいいのかなとか、いろんな思いが交錯したマスターズの解説だったね。まあ自分としては至らなかったっていうのが正直な感想だね。

 ただし解説者としては至らなかったけど、自分にとってはオーガスタに行って、ラウンドできて、しかもマスターズの解説ができたってことは、自分のゴルファー人生の中ではよかったかなと思う。これから先、もう一度あの感動っていうか、まあとかく忘れてしまいがちな夢とか希望とかっていうのをもう一度思い起こさせられたっていう意味ではよかったね。

 インターネットでもいろいろよかっただとか悪かっただとか、いろんな意見っていうのがあったけど、やっぱり100人いたら100人の感じ取り方っていうのは違うわけだから、その100人の人みんなに好かれるっていうのは無理な話だよね。

 だから松下さんについても、現場のスタジオに行ってみればわかるんだけど、いろんな時間的な制約、それからその実況として、ほんとに秒単位っていうか分単位での中で切り盛りしてた難しさっていうのは実際あったんだ。

 でほんと彼も全力投球でやったし、岩田さんも一生懸命やったし、僕はほんと二人に助けられて、自分の至らなさっていうのをカバーしてもらえて、ありがたかったっていうのがほんとに正直な印象だね。


(1999.4.25掲載)

一段と難しくなった

 今日は海外の選手の使っているクラブについて書いてみよう。向こうの選手のクラブの特徴的なことっていうのは、やっぱりキャビティが多くなってきてることだね。キャビティが全体の80%近く、マスターズ出場選手の80%ぐらいを占める感じだね。ただ、やっぱり普通のトラディショナルな、いままでの旧型のタイプを使ってる選手もたくさんっていうか、それなりにいた。

 まあどちらがいいかっていうのは完全に個人個人の好みの違いによってくるね。風の中でもちゃんと重たい球を打ちたいのか、あるいは風があってもボールがやさしくつかまってくれるほうがいいのか。そのどちらを選ぶかによってずいぶん違ってくる。

 逆にもっとはっきり言えば、自分はスイートスポットを絶対外さないんだというタイプの選手、例えばタイガーみたいに、スイートスポットに当てられる自信のある選手っていうのは、普通のいままでのタイプを使うし、多少ブレてもおおざっぱにいきたいっていう選手はキャビティを使ってくる。だいたいそういうふうな分かれ方をしてる。

 あとマスターズで気づいたことは、ほんとにより一段と難しくなったこと。大会が始まって、風が吹いたらもうこんなピンは絶対に寄らないぞっていうところがある。例えば最終日の11番ホールだとか、14番ホール、17番ホールなんていうのはもう、なんだこれぇ〜っていうようなとこだったね。グリーンが硬くて、しかもこぶの上ワンピン。こぶの上ワンピンって言ったって、こぶの上は平らじゃないからね。ダウンヒルになってる。そのこぶギリギリに落ちたって絶対に7、8メートル奧までいってしまうっていうようなセッティングなんだ。

 たぶんこれを日本でやったら、ほんとに選手からブーイングが出るだろうね。でも正直なところ、中嶋個人として正直に言えば、やっぱりメジャートーナメントっていうのは絶対に寄らないピンがあるんだよね。


(1999.4.26掲載文から抜粋)

より強くなるために

 絶対に寄らないピンというと、例えばセントアンドリュースの12番ショートホール。このショートホールはものすごいところにピンが切ってある。右のバンカーを越えたところで、しかも風はフォロー。アゲンストになっててもそこにはまず寄らないっていうところだね。アゲンストになってたほうが寄りやすいんだけど、ほんとに全英オープンの中ではよくそこで何組かつまるね。

 テレビ中継も朝から晩までずっとやってるから、だいたい映されるホールなんだけど、まず8メートル以内に寄ったのは見たことない。そういう中でまあロングパットが入ってバーディっていうのはあるんだけど、マスターズなんかそんなホールがある。それに対して選手自体は、今回のピンの位置でもグリーンの硬さでも、クレームを出してないんだ。

 これはちょっときついかなというのもあるけれど、現実にこれだけクラブと道具が進化して選手に有利に働いてるのに、ゴルフコースがやらかくて止まって、寄るようなところにピンが切られてたら、それこそ25アンダー30アンダーっていうスコアが出てしまうわけだね。そうなってくると、はたしてそれで自分達の技術力アップにつながるのかと。そういうことを選手はしっかりと理解してる。

 今回オーガスタを回った後にTPCソーグラスも行ったんだけど、少なくともコースがフェアなんだ。例えばフェアウェイの刈り方、それからフェアウェイの芝生の状態、それからラフの状態、それからセッティング。要するにコースを回る上でのすべてのセッティングが、これだけやってるから文句ないだろうと。そういう中でやるから、選手全員が理解してるっていうのかな。上達するために何が必要なのか、自分達がより強くなるために何が必要なのか、そういうことを理解してる。


(1999.5.9掲載)

あれがマスターズ

 マスターズの解説については、それなりによかったっていう声も届いてるし、それはそれでよかったなっていうふうに思うんだけど、まあほんとたいへんでした。1回やっただけでもういいやって感じだね。

 今回ノーマンががんばったわけだけど、やっぱりノーマンがくるとやってほしいって気持ちになるよね。今回の解説ではどっちかっていうと静かにいこうよ、静かに見ましょうっていうのが今年の基本的なテーマだったんだ。だから極力しゃべらないでいたいなぁと思ってた。

 3日目の18番ホールでノーマンがバーディ取ったよね。右のラフから寄せて。あの時グリーンの上に来た時、ずーと黙ってたでしょ、みんな。ああいうんじゃなきゃダメなんだ。あの時バーディ決めるまで、1分以上黙ってたと思うんだけど、あれがマスターズだからね。

 ほんとしゃべると、場面が壊れるっていうのがある。場面が変わったときに解説入れても、あれ?ってなっちゃうから、なるべく静かに、なおかつ解説入れる時は的確にって思ったんだ。

 ノーマンの他だと、ラブの最終日の16番ホールなんかもすごかったよね。でカメラがまたそのボールにすっと寄るんだ。もうどこのメーカーの何番のボールかもわかっちゃうぐらい寄るよね。

 撮ってるカメラマンもわかってる。どこの傾斜でどこに転がっていくか。もうね、マスターズ中継のチームはゴルフ中継のメジャーリーガーだよ。池とかクリークに入ってもすーと寄っていくでしょ。ラブだったかがクリークに入れた、で、そのボールがすっと映される。誰があんなところにカメラ持ち込むんだって感じのところまで撮ってるよね。